デザイン
常識では考えられない恐ろしいデザイン。







曲名紹介にもかかわらず上が切れている。









新聞の切り抜きが折り込まれている「シブヤROCKTRANSFORMED状態」のジャケット。


























ていうか、たまに気の狂ったようなデザインしてますよね。
:たとえばなんですか?
:東芝EMIの「東」の字だけデカイ。とか(笑)。
:あ〜〜、それはね、向井のキチガイによるものです(笑)。向井とか、今はブッチャーズの吉村さんとかと一緒にやってるわけですけど。僕らは学校とか行って、普通にデザインの勉強とかすると、文字組とか、行間、文字間とかバランスを取ろう、取ろうとしますよね。でもそういうのと違う感覚の持ち主と一緒に仕事をすると、その人達にとっては、そいいうバランスはどうでもいいことなんですよ。一緒に作りながら、横から「そんなに揃えないでいい」って、いわれたりして。「ああ、これだとバランス悪くなるのになあ」と思いつつ、「自分だけでやってたらこうはならないなあ」と思うんですよ。普通のグラフィックデザインでは通用しないことだけど、音楽のジャケットの場合はそれが許されるんですよね。だからすごく自分のやってる仕事は極めて貴重な感じがします。
 記録シリーズの中の曲名とかも、スゴイ切れてますよね。普通は仕事を発注するクライアントとデザイナーは別々に仕事してるから、できあがってから見せるじゃないですか。だから見せる前に自分でデザインしながら「文字は見えなきゃいけないよなあ」とか思うじゃないですか。でも向井がその場で「切れてていい」って言ったらいいんで、他とは変わったことができるし、僕が一人で作ってたら出来ないモノも出来る。
:実作業はどういうふうに進めてるんですか?
:作業場は自宅と会社と両方ありますけど、メンバーとやる場合は東芝EMIでつめてやりますね。
:私の中で1、2を争う衝撃のジャケットは「シブヤROCKTRANSFORMED状態」ですね。
:これはもともと、中のハズだったんですよ。中が広げたら新聞になってるっていうのがいいんじゃないかって、言って。で、新聞をコピーして折って入れて置いておいたら、知らんうちに向井が来て、見て「ああ、これいいやん、これで行こう」で、決まり。
:うははは。
:僕は「騒やかな演奏」ですね、雑誌とかで見たとき「Now on print」みたいな状態だと思ってたんですよ。そしたら店に行ったらそのまんまのものが(笑)。
:ナンバーガールはここにバンド名が入ってないからとか、曲名が入ってないからって、売れる枚数が変わるバンドじゃないですからね。だからアーティストが自由にやれる。だけど、それは僕一人の力じゃないですからね、僕だけでは、なにも出来てないんですよ。
:いや、ちゃんとバランスをとれる人がいて、そしてそれを壊す人がいる。壊す人だけが才能があるわけじゃないですから。
:なにがいつも気になるかと言えば、このバランス感覚だと思うんです。アーティストが自分で作ってるのはわかるんだけど、それにしては隙がない。隙がないけど、ものすごく変。その隙のなさを作ってるのが、三栖さんなんですよね。デザイン的に同業者から見れば、ありえないことだらけだけど、それをそれをまとめ上げてる。
:これが出来るのもう一つ、向井が東芝EMIに対して、対等な意識を持ってるからなんですよね。「出させてもらってる」とか「大メジャーのメーカー」だとか思ってない。だからこれだけ、自分たちらしいものが作れるんでしょうね。
:ナンバーガールと、ナンバーガールのグラフィックっていうのは、すごくシンクロしていて、それがとても気持ちいいです。
:なによりも、それが一番大事なことだと思ってるんですよ。ボクよりもっと優秀なデザイナーなんてもっといっぱいいるんですよ。なんでボクかって考えたら、そういうところしか残ってないんですよ。一緒に共感して、近いところで発想して、面白がって作れる。
:でも、僕らデザイナーからしてみれば、アーティストとそういう関係を結べるデザイナーっていうのはすごくうらやましいですよ。
:そうですか? でも、ぼくなんてそれしかないですからね。
:でも辛くもありますか?
:今のところは辛いところはないです(笑)。でももちろん楽しいことだけじゃないですけどね。